AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
MPS1を標的とした免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性を克服するための新規治療法の開発
課題管理番号
21cm0106705h0002
統合プロジェクト
医薬品プロジェクト
事業名
次世代がん医療創生研究事業
タグ(2021)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
タグ(2020)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
代表研究機関
公益財団法人がん研究会
研究代表者
(2021) 北嶋俊輔 , 公益財団法人がん研究会 , がん研究所 細胞生物部 研究員
(2020) 北嶋俊輔 , 公益財団法人がん研究会 , がん研究所 細胞生物部 研究員
研究期間
2020年度-2021年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 14,950
  • 2021年度
    6,500
  • 2020年度
    8,450
研究概要(2021)
これまでに研究開発代表者は、KRAS変異型非小細胞肺がん(NSCLC)のサブクラスの1つであるKRAS;LKB1変異(KL)型NSCLCにおいて、STING経路の不活性化に伴い、腫瘍細胞の抗原提示能や腫瘍領域内への細胞傷害性T細胞の浸潤度が減少することから、LKB1変異によるSTINGの発現抑制が、KL型NSCLCの免疫原性低下に直接寄与することを明らかにした。これらの研究成果から、KL型NSCLCにおいてSTING経路の活性化が、免疫チェックポイント阻害薬に対する抵抗性を克服するための治療戦略として有効であると考えた。当年度は、昨年度のin vitroでの条件検討の結果を基盤として、同系マウスモデルを用いて、MPS1阻害剤投与が免疫チェックポイント阻害薬治療抵抗性に与える影響を抗PD-L1との併用療法により検討する。具体的には、まず初めにCRISPR/Cas9系によりLkb1を欠損させることで、ヒトKL型NSCLC細胞と同様に、STINGの発現減少や同系マウス皮下移植後に抗PD-L1抗体投与に対する治療抵抗性を誘導できるか検討する。Lkb1欠損により抗PD-L1抗体投与に対する治療抵抗性を誘導できた場合は、抗PD-1/PD-L1抗体とMPS1阻害剤単剤あるいはエピジェネティクス阻害剤との併用投与を行い、腫瘍形成や微小環境内の免疫細胞の組成に与える影響を解析する。
研究概要(2020)
これまでに申請者は、KRAS変異型非小細胞肺がん(NSCLC)のサブクラスの1つであるKRAS;LKB1変異(KL)型NSCLCにおいて、細胞質内DNAセンサーであるSTINGの発現がLKB1変異依存的に抑制されていることを明らかにした。さらに、STING経路の不活性化に伴い、腫瘍細胞の抗原提示能や腫瘍領域内への細胞傷害性T細胞の浸潤度が減少することから、LKB1変異によるSTINGの発現抑制が、KL型NSCLCの免疫原性低下に直接寄与することを明らかにした。これらの研究成果から、KL型NSCLCにおいてSTING経路の活性化が、免疫チェックポイント阻害薬に対する抵抗性を克服するための治療戦略として有効であると考えた。当年度は、申請者が薬剤スクリーニングにより見出したMPS1阻害剤投与によるSTING経路活性化機構、さらにSTING下流シグナル亢進が免疫細胞とがん細胞の相互作用に与える影響を解析する。STING経路の代表的な下流シグナルであるCXCL10、IFN-bの分泌亢進、またはTBK1およびSTAT1のリン酸化亢進を指標として、主に細胞培養系を用いて最適な投薬条件を決定する。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
本研究では、研究開発代表者が、KRAS;LKB1 変異(KL)型非小細胞肺がん(NSCLC)に対して STING経路を活性化する薬剤として見出した Monopolar Spindle 1 kinase (MPS1)阻害剤を用いて、KL 型 NSCLC患者が示す免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性を克服するための新規治療法の開発を目指す。本年度は、前年度に作製したヒト KL 型 NSCLC と同様に免疫療法に対して治療抵抗性を示し、同系マウスに皮下移植可能なマウス KL 型 NSCLC 細胞を用いて、MPS1 阻害剤が STING 経路依存的に抗腫瘍免疫を介して治療効果を示すかを検討した。STING 経路を活性化する MPS1 阻害剤の投与条件を in vitro,in vivo で最適化した後、本マウスモデルを用いて抗腫瘍効果を検討したところ、計 4 日間の MPS1 阻害剤投与のみで、マウスの体重減少無しに長期的な腫瘍抑制効果を示した。特に、KL 型 NSCLC に対してSTING の発現を誘導する DNMT 阻害剤 Decitabine を、MPS1 阻害剤投与前に1週間投与することにより、ほとんどの個体で(6/7)治療開始から2ヶ月以上、再増殖無しに腫瘍抑制効果が維持された。併用群においても、治療開始初期に Decitabine は合計 7 日間、MPS1 阻害剤 BAY-1217389 は合計 4 日間投与したのみであり、その後は薬剤投与無しに長期的な奏功を達成することから、抗腫瘍免疫の関連が示唆された。実際に、本マウスモデルの未治療群では、腫瘍辺縁部に CD8 陽性 T 細胞が集積することがわかったが、併用群では CD8 陽性 T 細胞の腫瘍内浸潤の比率が上昇すること、さらには中和抗体による CD8 陽性 T 細胞除去により治療効果が顕著に抑制されることから、MPS1 阻害剤を基盤とした本併用療法による抗腫瘍効果の少なくとも一部は抗腫瘍免疫を介していることが証明された。
研究開発分担者は、これまでに開発してきたマイクロ流体装置を用いた3次元共培養法により同一患者由来の免疫細胞とがん細胞の相互作用を解析することを目標としており、本年度は細胞株を用いて、共培養実験系をさらに発展させることを目標とした。具体的には、まず始めに、MHC class1 の細胞膜上での安定性に必須である B2M を欠損させたがん細胞を CRISPR/Cas9 系により作製し、次に、主に MHC class1 の発現が低下したがん細胞等を標的として細胞死を誘導する NK92 とマイクロ流体装置内で3次元共培養を行った。その結果、実際に、NK92 により誘導される B2M 欠損依存的な細胞死を検出することが出来た。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.NR.Mahadevan, EH.Knelson, JO.Wolff, A.Vajdi, M.Saigi, M.Campisi, D.Hong, TC.Thai, B.Piel, S.Han,BB.Reinhold, JS.Duke-Cohan, MJ.Poitras, LJ.Taus, PH.Lizotte, A.Portell, V.Quadros, AD.Santucci, T.Murayama,I.Canadas, S.Kitajima, A.Akitsu, M.Fridrikh, H.Watanabe, B.Reardon, PC.Gokhale, CP.Paweletz, MM.Awad,EM.Van Allen, A.Lako, XT.Wang, B.Chen, F.Hong, LM.Sholl, MY.Tolstorukov, K.Pfaff, PA.Janne, E.Gjini,R.Edwards, S.Rodig, EL.Reinherz, MG.Oser, and DA. Barbie*. “Intrinsic immunogenicity of small cell lungcarcinoma revealed by its cellular plasticity.” Cancer Discovery, 11(8):1952-1969. 2021.

2.T.Tani, S.Kitajima, EB.Conway, EH.Knelson, and DA. Barbie*. “KRAS G12C inhibition and innate immunetargeting.” Expert Opinion on Therapeutic Targets, 131(2):e135038, 2021.

3.K.Sehgal, A.Portell, EV.Ivanova, PH.Lizotte, NR.Mahadevan, JR.Greene, A.Vajdi, C.Gurjao, T.Teceno, LJ.Taus,TC.Thai, S.Kitajima, D.Liu, T.Tani, M.Noureddine, CJ.Lau, PT.Kirschmeier, D.Liu, M.Giannakis, RW.Jenkins,PC.Gokhale, S.Goldoni, M.Pinzon-Ortiz, WD.Hastings, PS.Hammerman, JJ.Miret, CP.Paweletz, and DA. Barbie.“Dynamic single-cell RNAsequencing identifiesimmunotherapy persister cellsfollowing PD-1 blockade.” Journal of Clinical Investigation, 131(2):e135038, 2021.

学会・シンポジウム等における口頭・ポスター
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1.Novel strategy for priming immunogenicity of KRAS;LKB1 mutant lung cancer through MPS1 inhibition,北嶋俊輔,第 80 回日本癌学会学術総会(横浜), 2021/9/30,国内,ポスター

国内 / ポスター

2.紡錘体チェックポイントキナーゼ MPS1 による STING 経路の制御機構解明とがん免疫療法への応用,北嶋俊輔,第 94 回日本生化学大会(オンライン), 2021/11/3,国内,口頭

国内 / 口頭

3.Novel strategy for priming immunogenicity of KRAS;LKB1 mutant lung cancer through MPS1 inhibition,北嶋俊輔,第 62 回日本肺癌学会学術総会(横浜), 2021/11/26,国内,口頭

国内 / 口頭



更新日:2023-04-13

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