AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
Epstein-Barrウイルス感染がん治療薬の開発
課題管理番号
21ck0106517h9903
統合プロジェクト
疾患基礎研究プロジェクト
9つの連携分野プロジェクト
ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト
事業名
革新的がん医療実用化研究事業
タグ(2021)
/研究の性格/生命・病態解明等を目指す研究
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
タグ(2020)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
タグ(2019)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/応用
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
代表研究機関
公立大学法人名古屋市立大学
研究代表者
(2021) 奥野友介 , 公立大学法人名古屋市立大学 , 大学院医学研究科 ウイルス学分野・教授
(2020) 奥野友介 , 国立大学法人東海国立大学機構 , 名古屋大学医学部附属病院ゲノム医療センター・病院講師
(2019) 奥野友介 , 国立大学法人名古屋大学 , 医学部附属病院ゲノム医療センター・病院講師
研究期間
2019年度-2021年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 34,060
  • 2021年度
    14,950
  • 2020年度
    9,100
  • 2019年度
    10,010
研究概要(2021)
令和2年度に構築した全遺伝子スクリーニング系を用いて複数のEpstein-Barrウイルス(EBV)感染細胞株におけるスクリーニングを行うとともに、得られている候補遺伝子のバリデーションを進める。(1)細胞株の構築・収集については、green fluorescence protein (GFP)導入EBVを有する細胞株を、さらに2株構築する。(2)全遺伝子スクリーニングについて、(a)感染細胞からEBVを除去する遺伝子の特定を、2021年9月末までにさらに1株について検討を完了する。(b)EBV感染と合成致死になる遺伝子の特定を、2021年9月末までに5株を目標に完了する。(3)分子標的薬・低分子化合物の探索について、得られている候補遺伝子について、複数のノックダウン法による検討を進める。分子標的薬が利用可能な1遺伝子については、3種類の分子標的薬の効果を確認する。EBVが自然感染した細胞株でのバリデーションを可能にするため、EBVをフローサイトメトリーで検出し、細胞ごとのEBV感染状態を確認できる実験系を構築する。最終的には、異種移植モデルによる検討を行う。
研究概要(2020)
令和元年度に構築・収集した細胞株と、検討を進めた全遺伝子スクリーニングの実験系を用いて、複数のEpstein-Barrウイルス(EBV)感染細胞株におけるスクリーニングを行う。(1) 細胞株の構築・収集について、2020年9月末までに、green fluorescence protein (GFP)導入EBVを有する細胞株を、さらに1株構築する。加えて、2020年9月末までに、EBV感染細胞株と、同一患者由来のEBV非感染細胞株を、計30株収集する。(2) 全遺伝子スクリーニングについて、(a) 感染細胞からEBVを除去する遺伝子の特定を、2020年9月末までに1株について検討を完了し、2021年3月末までにさらに1~2株について完了する。(b) EBV感染と合成致死になる遺伝子の特定を、2021年3月末までに3~5株について完了する。(c) 公共データを用いたスクリーニングのために、2020年3月末までに20株の検討を完了し、公共データを含めた統計解析を完了する。得られた候補遺伝子について、検証実験を適宜行う。
研究概要(2019)
Epstein-Barrウイルス(EBV)感染がんに対する治療薬を開発するための標的となる遺伝子を特定する。実験に用いる、種々のEBV感染・非感染細胞株を購入・収集する。また、EBV非感染細胞株に人工的にEBVを感染させ、感染を維持できる細胞株の樹立を試みる。細胞株に対して、レンチウイルスを用いた遺伝子導入・ノックダウンができる実験系を構築する。導入遺伝子の検出系を樹立し、得られた候補遺伝子については、試験管内の実験とマウス異種移植モデル実験による検証を行う。検証ができた遺伝子について、既知の分子標的薬(阻害薬・活性化薬)が存在すればそれを購入し、機能を検証する。期待が持てる1遺伝子については先行して各種実験を行い、評価を進める。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
本研究は、Epstein-Barrウイルス(EBV)感染がんに対する治療薬を開発することを目的とする。EBVは世界人口の95%が一度は感染するDNAウイルスであり、様々な腫瘍性・非腫瘍性疾患と関係する。巧妙な潜伏感染を特徴とし、感染すると生涯にわたりB細胞内で維持される。感染がんにおいて、EBVはHelicobacter pyroli、肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスに次いで4番目に頻度が高い病原体であり、本邦で年間約9,000例の上皮系と血液系の悪性疾患に関与する。EBVが環境中より検出されたことはなく、ヒト以外の宿主は確認されていないため、根絶が期待できるウイルスと考えられるが、潜伏感染機構が障壁となり、予防接種や免疫療法を含め、特異的な治療法が存在しない。
本研究開発において、特徴的な細胞株を用いて、2つのユニークなヒト全遺伝子のスクリーニング系を構築した。これらの系を用いて、欠損することで感染細胞からEBVを除去する効果を有する遺伝子を6つと、EBV感染と合成致死になる遺伝子を3つ特定した。EBVゲノムが感染細胞内で維持される機構はあまり理解されておらず、特にヒト遺伝子の関与は全く不明といってよい状況で、欠損により感染が解除される遺伝子を実際に特定できたことは、学術的に新規性の高い発見であるのみならず、治療標的が乏しいEBVについて、これまでとは異なるアプローチによる治療法開発を可能にすると期待される。加えて、構築されたスクリーニング系は、薬剤ライブラリーのスクリーニング等、新たな治療法開発研究に応用可能である。コロナ禍でリモートワーク等が求められ培養実験が進みにくい時期などがあり、当初のスケジュールからは遅延が生じた。また、EBV感染が解除される機構の解明を進めることが難しく、この発見に関する論文化は未だに見込みが立っていない。しかしながら、これまで存在するかも不明であった、EBV感染状態を制御するヒト遺伝子を特定するなど、有意義な発見が得られた開発研究であったと考える。研究開発期間後にも、主に発見した遺伝子がEBV感染を解除する機構の研究を継続し、知財の取得、論文化、低分子化合物探索への導出など、研究を発展させていく予定である。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.Kimura H, Okuno Y, Sato Y, Watanabe T, Murata T. Deletion of Viral microRNAs in the Oncogenesis of Epstein-Barr Virus-Associated Lymphoma. Front Microbiol. 2021;12:667968. doi: 10.3389/fmicb.2021.667968

2.Yanagi Y, Okuno Y, Narita Y, Masud HMAA, Watanabe T, Sato Y, Kanda T, Kimura H, Murata T. RNAseq analysis identifies involvement of EBNA2 in PD-L1 induction during Epstein-Barr virus infection of primary B cells. Virology. 2021;557:44-54. doi: 10.1016/j.virol.2021.02.004

「国民との科学・技術対話社会」に対する取り組み
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1.ウイルスや細菌が起こす病気を解決する、奥野友介、名古屋市科学館(名古屋市)、2021/11/03、国内

国内



更新日:2023-04-19

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