AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
生細胞内セントラルドグマ分子の光操作
課題管理番号
21am0401028h0003
統合プロジェクト
医薬品プロジェクト
9つの連携分野プロジェクト
オールジャパンでの医薬品創出プロジェクト
事業名
先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業
タグ(2021)
/研究の性格/研究基盤及び創薬基盤の整備研究<創薬技術・ICT基盤・プラットフォーム関係含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
タグ(2020)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
タグ(2019)
/研究の性格/医薬品・医療機器等の開発を目指す研究<医療機器開発につながるシステム開発を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
代表研究機関
国立大学法人東京工業大学
研究代表者
(2021) 湯浅英哉 , 国立大学法人東京工業大学 , 生命理工学院・教授
(2020) 湯浅英哉 , 国立大学法人東京工業大学 , 生命理工学院・教授
(2019) 湯浅英哉 , 国立大学法人東京工業大学 , 生命理工学院・教授
データサイエンティスト
湯浅英哉 国立大学法人東京工業大学・生命理工学院, 教授 中村浩之 国立大学法人東京工業大学・科学技術創成研究院, 教授
研究期間
2019年度-2021年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 30,914
  • 2021年度
    9,880
  • 2020年度
    10,634
  • 2019年度
    10,400
研究概要(2021)
湯浅グループでは、令和2年度末に明らかになる予定のニトロビフェニル(NBP)含有RNAの変異原性の結果を踏まえ、これが陰性なら同化合物の肝毒性試験を行う。陽性の場合は、ケトビフェニル(KBP)含有RNAを6 mg合成し変異原性試験に付す。NBP含有RNAについてはさらに光ノックダウン効果の検証を行う。他の増感剤を含むRNAも10種類以上合成し、光ノックダウンアッセイを行うとともに、ヌクレアーゼアッセイ、ゲルシフトアッセイなどを行い、光酸化の位置選択性の検証を行う。また、これらの化合物のDNAに対する光点変異効果の検証も行う。中村グループでは、令和2年度にNBPよりも酸化的光ノックダウン(oxPKD)効果の高い光増感剤を探索した結果、BODIPY誘導体であるIBDPを見出した。本年度は、IBDPに対し、グルコース輸送体(GLUT1)のリガンドを結合させたLg(GLUT1)-IBDPを合成し、細胞表面に発現しているGLUT1のoxPKD効果をウェスタンブロッティング法により検証する。さらに、モノカルボン酸排出機構に関わるMCTに対するLg-IBDPを合成しoxPKDによる抗腫瘍効果を検討することで、分子標的型光線力学療法を構築する。
研究概要(2020)
前年度において、本研究の核心光増感剤であるNBPの変異原性が陽性であることが判明した。そこで急遽、変異原性の主な原因と考えられるニトロ基を含まない増感剤の開発を行い、新たな増感剤としてKBPを見出すことができた。そこで、予定していたNBPの肝機能障害性試験は行わず、KBPの変異原性の結果を待ってKBPの肝機能障害性試験を令和3年に行う予定に変更した。湯浅グループでは、光増感剤であるニトロビフェニル誘導体NBPが共有結合された核酸ユニットであるNBPCとNBPTの合成法が確立されたので、その大量合成を行い、光編集機能について検証を行う。中村グループでは、炭酸脱水酵素(CA)を標的タンパク質とし、そのリガンドであるベンゼンスルホンアミドをNBPと結合させたLg(CA)-NBPを合成することに成功した。これに対し、光照射による酸化的タンパク質ノックダウン(oxPKD)効果を確認することを目的とし、既に開発しているリガンド結合ルテニウム光触媒(Lg(CA)-Ru)との比較を行う。
研究概要(2019)
本研究では、核酸の光編集とタンパク質の光改変の2つの新規技術を確立することによって、生細胞における特定タンパク質の機能のON/OFF をDNA・RNA・タンパク質の各段階においてリアルタイムで光操作する技術を開拓することを目的とする。本年度は、「条件採択」として付されていた「ニトロ基の毒性発現の影響」に関する検討事項を優先させ、当初の研究計画に新たに、(1) BPの変異原性試験を検討する。さらに、(2) ビフェニル誘導体(BP)をoligoDNA/RNAに組み込むためのユニット核酸の合成するとともに、(3) 炭酸脱水酵素(CA)を標的タンパク質とし、そのリガンド分子(Lg)にBP を連結させた複合体(Lg-BP)の合成、および、酸化的不活性化による標的タンパク質ノックダウン(oxPKD)効果を確認し、(4) CAがLg-BPによって酸化されるアミノ酸残基を同定する。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
本研究では、核酸の光編集とタンパク質の光改変の2つの新規技術を確立することによって、生細胞における特定タンパク質の機能のON/OFFをDNA・RNA・タンパク質の各段階においてリアルタイムで光操作する技術を開拓することを目的とする。
独自に開発した小さな増感剤であるニトロビフェニル(NBP)を含むアンチセンスオリゴ核酸(AON)として、グルコース輸送体(GLUT1)を標的とするAON1とAON2を合成した。AON1は変異原性(micoAmes)も肝毒性(nonGL)も示さなかった。また、AON2をガン細胞に投与後、光照射し、全タンパク質を回収してWestern Blottingを行い、光ノックダウン効果がほぼ100%であることが判明した。さらに、NBPの結合位置が異なる多種のAONを合成し、G酸化の位置選択性を研究した。その結果、NBPに近いG(+1~+5)より遠いG(+8~+10)の方が効率良く酸化されるという興味深い結果が得られた。NaN 3 による光酸化反応の阻害実験、光酸化反応の時間との関連、二重鎖の融解温度とCDスペクトルなどの基礎データの取得も行い、増感作用はType II型の 1 O 2 生成によるものであり、二重鎖は通常のB型DNA構造であることを確認した。
炭酸脱水酵素(CA)に対して、NBPとリガンドの複合体は光ノックダウン(oxPKD)能が低かったが、ジヨウ素化BODIPY(IBDP)とリガンドの複合体(Lg-BP6)は標的タンパク質の1つであるCAIXに対して高いoxPKD効果を発揮した。そこで、GLUT1のリガンドとIBDPの複合体(PS-Lg(GLU))を合成した。PS-Lg(GLU)のoxPKD効果をウェスタンブロッティング法によって細胞内GLUT1存在量を確認することで検証したところ、ほぼ100%のoxPKDが判明した。既存の光線力学治療用増感剤であるLaserphyrinとoxPKD効果の比較を行ったところ、LaserphyrinはGLUT1以外にα-チューブリンのタンパク質も分解する一方、PS-Lg(GLU)はGLUT1のみ分解した。このタンパク質標的光酸化活性に加え、PS-Lg(GLU)は、Laserphyrinと同等の光線力学細胞障害活性を示すことから、「分子標的型光線力学療法」という新たな概念を確立した。さらに、モノカルボン酸輸送体(MCT1)に結合する阻害分子(BAY-8002)とIBDPを結合させたPS-Lg(MCT)の前駆体の合成を行った。
以上のように、生細胞における特定タンパク質の機能のON/OFFをRNA・タンパク質の各段階においてリアルタイムで光操作する技術について、研究開発計画どおりコンセプトを証明することができた。いっぽう、計画されていたDNA段階での同技術の証明は現在のところ達成できていない。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.湯浅英哉, 金森功吏, がんの光線力学治療を指向した小さな光増感剤開発. 光アライアンス, 2021, 32, 14-17.

2.湯浅英哉, 近赤外光を用いた光線力学治療への展開, CSJ Current Review, 2021, 42, 46-51.

3.湯浅英哉, 金森功史, 小さな光増感剤への期待と課題. JPA日本光線力学学会NEWS LETTER, 2021, 24, 5-7.

4.中村浩之, 盛田大輝, 光反応を利用したタンパク質の化学修飾, CSJ Current Review, 2022, 43, 71-77.

5.Kanamori T, Miki Y, Katou M, Ogura S, Yuasa H. 4'-Nitrobiphenyl Thioglucoside as the Smallest, Fluorescent Photosensitizer with Cancer Targeting Ligand. Bioorg. Med. Chem. 2022, 61, 116737. doi: 10.1016/j.bmc.2022.116737

学会・シンポジウム等における口頭・ポスター
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1.小型ビフェニル型光増感剤による位置選択的なグアノシン光酸化, 金森功吏, 金子翔大, 浜本航治, 汪潮, 李若瑜, 湯浅英哉, 第31回日本光線力学学会学術講演会, 2021/10/22, 国内, 口頭.

国内 / 口頭

2.近赤外光を用いた光線力学治療への展開, 湯浅英哉,日本化学会第102春季年会, 2022/3/25, 国内, 口頭.

国内 / 口頭

3.小型高効率光増感剤による二重鎖中のグアノシンの光酸化特性, 金森功吏, 金子翔太, 浜本航治, 汪潮, 李若瑜, 湯浅英哉, 日本化学会第102春季年会, 2022/3/25, 国内, 口頭.

国内 / 口頭

4.細胞透過型有機光触媒による標的タンパク質選択的不活性化と抗腫瘍活性プローブへの応用, 三浦一輝, Wen Yijin, 對馬理彦, 中村浩之, 日本薬学会142春季年会, 2022/3/25, 国内, 口頭.

国内 / 口頭

5.Target protein knockdown using photocatalysts: Application to photodynamic therapy, Hiroyuki Nakamura, Yijin Wen, Kazuki Miura, Michihiko Tsushima, Hideya Yuasa, Pacifichem, Honolulu, Hawaii, USA, 2021/ 12/16, 国外, 口頭.

国外 / 口頭

6.リガンド連結型有機光触媒を用いた標的タンパク質の酸化的不活性化と抗腫瘍活性, 對馬理彦, Yijin Wen, 津賀雄輝, 金森功吏, 湯浅英哉, 中村浩之, LASER WEEK IN KOCHI, 2020/10/9, 国内, 口頭.

国内 / 口頭



更新日:2023-04-13

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