AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
消化器系がん患者由来の鶏卵がんモデルと個別化医療の開発
課題管理番号
21ck0106469h0003
統合プロジェクト
疾患基礎研究プロジェクト
9つの連携分野プロジェクト
ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト
事業名
革新的がん医療実用化研究事業
タグ(2021)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/開発フェーズ/基礎的
/対象疾患/新生物
タグ(2020)
/研究の性格/研究基盤及び創薬基盤の整備研究<創薬技術・ICT基盤・プラットフォーム関係含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/薬機法分類非該当
/対象疾患/新生物
タグ(2019)
/研究の性格/研究基盤及び創薬基盤の整備研究<創薬技術・ICT基盤・プラットフォーム関係含む>
/開発フェーズ/基礎的
/承認上の分類/医薬品
/対象疾患/新生物
代表研究機関
国立大学法人京都大学
研究代表者
(2021) 玉野井冬彦 , 国立大学法人京都大学 , 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点・特定教授
(2020) 玉野井冬彦 , 国立大学法人京都大学 , 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点・特定教授
(2019) 玉野井冬彦 , 国立大学法人京都大学 , 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点・特定教授
データサイエンティスト
松本光太郎 国立大学法人京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点, 特定助教 大橋真也 国立大学法人京都大学 大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学, 助教
研究期間
2019年度-2021年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 55,010
  • 2021年度
    19,520
  • 2020年度
    15,990
  • 2019年度
    19,500
研究概要(2021)
昨年度の研究で食道がんのCAMモデルでゲノム解析を行うことができ、CAM腫瘍が患者のがんの遺伝子変異プロフィールを維持していることが明らかになった。CAMモデルの研究で初めてのデータであり、重要な成果と思われる。今年度はこうした研究をさらに拡大する。第一に手掛けるのは全エクソーム解析によりゲノム情報の維持を調べることである。今年度の研究のもう一つの柱としては希少がんのCAMモデルがある。特にCIC-DUX4肉腫に焦点をあてたい。昨年の研究でCIC-DUX4患者由来の細胞を用いてCAM腫瘍が作成できることを明らかにしたが、H&E染色や免疫染色でCAM腫瘍の解析を行う。CIC-DUX4肉腫に関しては融合遺伝子の存在をCAM腫瘍において確認する。この腫瘍はニワトリの繊維芽細胞やマクロファージ、そして血管細胞が混入していわゆるがんの微小環境を形成していると考えられる。このような腫瘍の微小環境の解析も行う。さらにCAM腫瘍の継代についても検討する。CIC-DUX4のCAM腫瘍をバラバラにして3次元培養の培地を使い、オルガノイドを作る方法で抗がん剤のスクリーニングが可能か検討する。
研究概要(2020)
患者由来のがんモデルとしてはTumor spheroidやPDXモデルを上げることができるが、私たちは新規のがんモデルとしてがんの鶏卵モデル(CAMモデル)を提唱し研究してきた。特に食道がんや胃がんに焦点を当てて患者由来の鶏卵モデル(PDcEモデル)を確立したい。このモデルは有精卵の中のトリ胚を覆っているChorioallantoic membrane(CAM)上にサンプルを植え付けることにより作成する。当年度ではこの腫瘍形成の過程、特に間質細胞や細胞外マトリックスが含まれたがんの微小環境の形成過程をH&E染色や免疫染色により明らかにする。次にできたCAM腫瘍が患者のがんに類似しているかどうかH&E染色や免疫染色、またゲノム解析により明らかにする。さらにこの患者由来のCAMモデルを用い、鶏卵ライブラリーを作り抗がん剤のスクリーニングを行い、個々の患者のがんに最適なテイラーメード医療の可能性を検討することを目指す。
研究概要(2019)
がんはそれぞれの種類により異なるだけでなく個々の患者により異なるので、有効ながん治療を確立するためには個々のがんを対象としたプレシジョンメディシン(最適医療)が必要になってくる。私達(玉野井研究室、京都大学高等研究院)は昨年から今年にかけて患者由来のモデルとして鶏卵モデルを開発した。そこでこの研究では京都大学医学部の武藤研究室と共同で、消化器系がんの生検検体(バイオプシー)を用い、患者のがんを鶏卵の中で再現させるPDcE(Patient-derived chicken egg)モデルを確立する予定である。当年度の目的としては患者のがんを小さく切り刻み、有精卵で胚をおおっているCAM膜上に置き、がんの生着、増殖を検討する。がんの悪性度と生着の効率との相関がみられるか検討する。また鶏卵の中にできたがんと患者のがんとの類似性を検討するためにがん切片をつくり、種々の染色、またゲノム解析で比較する。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
令和3年度は、すでに国立がんセンターの近藤格研究室との共同研究を開始していたCIC-DUX4肉腫のCAMモデルを開発し論文に報告した。CIC-DUX4肉腫は希少がんの一つであり、若年層に多く、進行が速いため治療の開発の必要性が高い。また融合遺伝子を持っているために鶏卵モデルの確立の検討に適している。まず近藤研究室で樹立された患者由来の細胞株を鶏卵に移植した。数日後にCAM腫瘍を形成することができH&E染色でその増殖を確認した。CIC-DUX4肉腫のマーカーについては、ひとつはCyclin D2が知られている。もう一つのマーカーはPEA3ファミリーに属する転写因子ETV4である。いずれのタンパクの発現は免疫染色、またウエスタンによって確認することができた。ETV4タンパクに関しては3種類のCAM腫瘍 (CIC-DUX4, 卵巣がん、脳腫瘍)の解析によりCIC-DUX4肉腫でのみ発現されているという知見を得ることができた。CIC-DUX4肉腫はCapicua遺伝子とDUX4(double homeobox 4)遺伝子の融合による融合遺伝子を持っている。この融合遺伝子の維持を調べることでCAM腫瘍がCIC-DUX4肉腫を反映しているか検討することができる。そこで、CAM腫瘍を調べたところこの融合遺伝子の存在を確認することができた。CIC-DUX4肉腫のCAM腫瘍についてのさらなる重要な知見として継代が可能であるという点をあげることができる。CAM腫瘍を切り取り新しいCAM膜上に移植すると生着することがわかった。一方、CAM腫瘍をバラバラにしてから96 well plateにまくことにより均一なサイズのオルガノイド (CAMオルガノイド)を作ることができることがわかった。できたCAMオルガノイドはETV4を発現している。またトリの繊維芽細胞を含んでいる。融合遺伝子の存在は継代したCAM腫瘍、CAMオルガノイドでも確認することができた。
さらに本年度は、ピロールイミダゾールポリアミド(PIP)というKRAS遺伝子を標的とする新たな抗がん剤のKR12を卵巣がんCAMモデルを用いて検討した。細胞実験においてKR12はがん細胞に容易に取り込まれ細胞核に結合した。さらに、卵巣がんCAMモデルにKR12を打ち込むんだ場合、高い腫瘍蓄積能があることが明らかとなった。このKR12に遺伝子をアルキル化する化合部であるCBIを結合させたKR12-CBIを投与することで抗がん作用を検討した。KR12を投与された卵巣がんCAMモデルにおいて腫瘍の増殖が抑えられたことから、KR12の抗がん剤としての有効性を明らかにできた。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.Manabu Muto, Chikatoshi Katada, Tetsuji Yokoyama, Tomonori Yano, Ichiro Oda, Yasumasa Ezoe, Satoshi Tanabe, Yuichi Shimizu, Hisashi Doyama, Tomoyuki Koike, Kohei Takizawa, Motohiro Hirao, Hiroyuki Okada, Takashi Ogata, Atsushi Katagiri, Takenori Yamanouchi, Yasumasa Matsuo, Hirofumi Kawakubo, Tai Omori, Nozomu Kobayashi, Tadakazu Shimoda, Atsushi Ochiai, Hideki Ishikawa, Kiichiro Baba, Yusuke Amanuna, Akira Yokoyama, Shinya Ohashi, Akira Yokoyama, for Japan Esophageal Cohort Study Group.Field Effect of Alcohol, Cigarette Smoking and Their Cessation on the development of Multiple Dysplastic Lesions and Squamous Cell Carcinoma: Long Term Multicenter Cohort Study.Gastro Hep Advances. VOLUME 1, ISSUE 2, P265-276, JANUARY 01, 2022 DOI:https://doi.org/10.1016/j.gastha.2021.10.005

2.Yukiko Mori, Osamu Kikuchi, Takahiro Horimatsu, Hiroki Hara, Shuichi Hironaka, Takashi Kojima, Ken Kato, Takahiro Tsushima, Ryu Ishihara, Kumi Mukai, Ryuji Uozumi, Harue Tada, Hiroi Kasai, Atsushi Kawaguchi, Manabu Muto. Multicenter phase II study of trifluridine/tipiracil for esophageal squamous carcinoma refractory/intolerant to 5-fluorouracil, platinum compounds, and taxanes: the ECTAS study.Esophagus. 2022 Jan 20. (in press) doi: 10.1007/s10388-021-00905-2.

3.Atsushi Yamada, Yui Matsuoka, Sachiko Minamiguchi, Yoshihiro Yamamoto, Tomohiro Kondo, Tomohiko Sunami, Takahiro Horimatsu, Kenji Kawada, Hiroshi Seno, Masako Torishima, Hiromi Murakami, Takahiro Yamada, Shinji Kosugi, Kokichi Sugano, Manabu Muto. Real-world outcome of universal screening for Lynch syndrome in Japanese patients with colorectal cancer highlights the importance of targeting patients with young-onset disease. Mol Clin Oncol. 2021 Dec;15(6):247.  doi: 10.3892/mco.2021.2409.

4.A. Komatsu, K. Matsumoto, Y. Yoshimatsu, Y. Sin, A. Kubota, T. Saito, A. Mizumoto, S. Ohashi, M. Muto, R. Noguchi, T. Kondo, F. Tamanoi, The CAM model for CIC-DUX4 sarcoma and its potential use for precision medicine, Cells, 10, 2613 (2021) doi: 10.3390/cells10102613

5.Y. Higashi, S. Ikeda, K. Matsumoto, S. Satoh, A. Komatsu, H. Sugiyama, F. Tamanoi, Tumor accumulation of PIP-based KRAS inhibitor KR12 evaluated by the use of a simple, versatile chicken egg tumor model, Cancers, 14, 951 (2022) doi: 10.3390/cancers14040951

学会・シンポジウム等における口頭・ポスター
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1.CIC-DUX4肉腫のCAMモデルの開発、玉野井冬彦、患者由来がんモデル講演会、オンライン、2021/12/17、国内、口頭発表

国内 / 口頭

2.The CAM model for rare cancer, Aoi Komatsu, First International CAM Conference, Online, 2022/02/08, 国外、Oral presentation

国外 / 口頭

3.がんの鶏卵モデル樹立とホウ素中性子捕捉療法(BNCT)への応用、松本光太郎、KUR専門部会、2022/03/09、国内、口頭発表

国内 / 口頭



更新日:2023-04-19

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