AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
物質使用障害を抱える女性に対する治療プログラムの開発と有効性評価に関する研究
課題管理番号
21dk0307086h0003
統合プロジェクト
ゲノム・データ基盤プロジェクト
9つの連携分野プロジェクト
脳とこころの健康大国実現プロジェクト
事業名
障害者対策総合研究開発事業<精神障害分野> , 長寿・障害総合研究事業
タグ(2021)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/開発フェーズ/臨床試験
/承認上の分類/薬機法分類非該当
/対象疾患/精神および行動の障害
タグ(2020)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/開発フェーズ/観察研究等
/承認上の分類/薬機法分類非該当
/対象疾患/精神および行動の障害
タグ(2019)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/開発フェーズ/該当なし
/承認上の分類/薬機法分類非該当
/対象疾患/精神および行動の障害
代表研究機関
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
研究代表者
(2021) 松本俊彦 , 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター , 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
(2020) 松本俊彦 , 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター , 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
(2019) 松本俊彦 , 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター , 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長
研究期間
2019年度-2021年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 17,784
  • 2021年度
    8,424
  • 2020年度
    9,360
  • 2019年度
    0
研究概要(2021)
2021年度は、2020年度に続き、国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症専門外来、アパリクリニック、特定非営利活動法人リカバリートラヴァイユ・それいゆ、広島県立総合精神保健福祉センターの4機関において、物質使用障害を抱えた女性患者(または女性利用者)を対象とした治療プログラムを試行し、効果評価のための研究を継続実施する。2020年度1年間に受診(または利用契約)した全ての女性患者(または女性利用者)を研究対象とし、治療プログラムに参加する実験群とそれ以外の治療を継続する対照群(目標数60名)において、エントリー時とエントリー6ヶ月後の前後比較を行う。ただし、機関によっては、対照群を置くことができない場合があることから、その場合は実験群のみの前後比較を行うこととする。また、2021年度の後半(2021年9月から2022年3月)には、治療プログラムのワークブック(トライアル版)の修正を行い完成版を作成するとともに、データの解析および報告書の作成を行う。
研究概要(2020)
2020年度は、前年度に完成したトライアル版のワークブックを用いて、国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症専門外来、アパリクリニック、特定非営利活動法人リカバリートラヴァイユ・それいゆ、広島県立総合精神保健福祉センターの4機関において、物質使用障害を抱えた女性患者(または女性利用者)を対象とした治療プログラムを試行し、効果評価のための研究を実施する。2020年度1年間に受診(または利用契約)した全ての女性患者(または女性利用者)を研究対象とし、治療プログラムに参加する実験群(目標数60名)と、それ以外の治療を継続する対照群(目標数60名)において、エントリー時とエントリー6ヶ月後の前後比較を行う。ただし、機関によっては、対照群を置くことができない場合があることから、その場合は実験群のみの前後比較を行うこととする。
研究概要(2019)
2019年度は、翌年度から始まる効果評価研究で用いるワークブックの試行版を作成する。ワークブックは、PTSD と物質乱用との併存患者に対するエビデンスに基づいた治療モデルとして世界中で広く活用されている「Seeking Safety A Treatment Manual for PTSD and Substance Abuse」(Lisa M. Najavits.,2001.研究開発代表者らの監訳により、2017年金剛出版から「PTSD・物質乱用治療マニュアル シーキングセーフティ」として邦訳書籍出版済み)や、その後同著者により執筆された自助のための書籍「Recovery from Trauma, Addiction, or Both Strategies for Finding Your Best Self」(Lisa M. Najavits,2017.研究開発代表者らの監訳により、2019年金剛出版から出版予定)をベースにしつつも、物質使用障害やPTSDの治療を専門とする臨床家や研究者、回復当事者などの意見も取り入れながら内容を十分検討し、わが国の物質使用障害を抱える女性を対象に広く活用可能な治療プログラムの完成を目指す。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
「物質使用障害を抱える女性に対する治療プログラム」(以下、女性プログラム)の有効性を検証した。2020年9月から2021年9月までの間に、研究実施機関を利用し、かつ、本研究に自発的に参加の意を示した依存症女性51名を分析対象とした。
対象者のAddiction Severity Index - Japanese version(ASI-J)の薬物使用領域コンポジットスコアは平均0.23(得点範囲0-1)であり、薬物問題の重篤度は高くないことが示された。一方で、84.3%が面前DV、両親の別居や離婚、身体的虐待などの小児期逆境体験を有しており、51.0%は3つ以上の逆境体験を重ねて有していた。また、IES-R (Impact of Event Scale-Revised) 改訂出来事インパクト尺度日本語版を用いた評価によると、51.0%がPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)のスクリーニングを目的としたカットオフ値を超えていた。依存症女性の多くは、薬物問題のみならず、なんらかのトラウマの問題を併せて有しており、双方の問題を視野に入れたトラウマインフォームドな治療的介入が有効であるといえる。
6ヶ月フォローアップ時のデータが得られた対象者(28名)を、女性プログラムの参加頻度別に3群(参加なし群(6名),参加50%未満群(8名),参加50%以上群(14名))に分類し、エントリー時と6ヶ月経過時の状態について前後比較を行った。いずれの群においても、薬物問題の重篤度に有意な差は認められなかったが、参加50%以上群では、介入の前後で以下の治療目標の達成割合が有意に変化する傾向が認められた。「行動する前に、安全かどうか考えてみる」については、介入後に「できた」と回答するものの割合は78.6%であり(McNemar's test,p=0.063)、「気持ちが動揺したときには、安全な方法で自分を落ち着かせることができる(グラウンディングなど)」については64.3%であった(McNemar's test,p=0.063)。これらの結果から、6ヶ月という短期間の介入では、薬物問題の重篤度に変化はみられないものの、「安全」に関する理解と実践については一定の効果が得られたものと考えられる。「安全」はトラウマインフォームドアプローチの基本的な 6 つの主要原則のひとつであり、女性プログラムにおける最重要治療目標でもある。今後は、薬物問題の重篤度、PTSD症状などのより直接的な指標を用いて、より長期的な介入効果を検討する必要がある。
なお、プログラム実施にかかわった心理士や研究者からのフィードバックをもとに、研究班員内でワークブックの最終改訂作業を行い、3月に最終版が完成した。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.松本俊彦.10代の薬物乱用・依存.こころの科学.2021,217,43-49

2.松本俊彦.アディクションと複雑性PTSD.精神療法.2021,47(4),475-477

3.松本俊彦.わが国において薬物依存症に対する薬物療法の導入を妨げているものは何か?.臨床精神薬理.2021,24,1191-1199

4.松本俊彦.依存症.精神医学.2021,63(11),1683-1690

5.松本俊彦.人はなぜ依存症になるのか~コネクションの対義語としてのアディクション~.心と社会 .2021,52(4),82-88

6.松本俊彦.物質使用障害治療とQOL.精神医学.2022,64(3),341-348

7.近藤あゆみ.第2章2治療③集団療法 女性を対象とした薬物依存症治療.第2章3回復支援②地域連携 薬物依存症者を持つ家族に対する支援.依存症のリハビリテーション.やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド~アルコール・薬物・ギャンブルからゲーム依存まで,松本俊彦, 佐久間寛之, 蒲生裕司 編.2021,248-252,288-292

8.大嶋栄子.トラウマ/サバイバル.臨床心理学.2021,21(4),387-400

9.大嶋栄子.傷にふれる:心的外傷体験をもつ人へのソーシャルワーク.ソーシャルワーク研究:社会福祉実践の総合研究誌.2021,47 (2),130-137

10.森田展彰.第3章母子と嗜好品・薬物C依存性薬物.(我部山キヨ子、武谷雄二編)助産学講座基礎助産学3母子の健康科学.2022,102-110

11.森田展彰.アルコール使用障害とDV・子ども虐待.(竹井健之編集)別冊・医学のあゆみ:アルコール医学・医療の最前線2021UPDATE.2021,121-27

12.森田展彰. DV,アディクションとアタッチメント.(遠藤利彦編)入門アタッチメント理論:臨床・実践への架け橋.2021,200-201

学会・シンポジウム等における口頭・ポスター
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1.依存症臨床からみたハームリダクションの必要性,松本俊彦,第117回日本精神神経学会学術総会,2021/9/19,国内,口頭

国内 / 口頭

2.自己破壊的で嗜癖な問題行動とどう向き合うか?-自殺の保護的因子にして危険因子としてのアディクション,松本俊彦,第117回日本精神神経学会学術総会,2021/8/20,国内,オンライン

国内 / 

3.薬物依存症臨床における最近のトピック.松本俊彦,2021年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会,2021/12/19,オンライン

不明 / 



更新日:2023-04-17

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