AMED研究開発課題データベース 日本医療研究開発機構(AMED)の助成により行われた研究開発の課題や研究者を収録したデータベースです。

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研究課題情報

研究課題名
薬物に効果の認められない線維筋痛症患者に対する鍼灸治療の有用性の検討
課題管理番号
20lk0310061h0002
統合プロジェクト
ゲノム・データ基盤プロジェクト
9つの連携分野プロジェクト
その他
事業名
「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業
タグ(2020)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/対象疾患/筋骨格系および結合組織の疾患
タグ(2019)
/研究の性格/医療技術・標準治療法の確立等につながる研究<診療の質を高めるためのエビデンス構築<診療ガイドライン作成等>を含む>
/開発フェーズ/臨床試験
/承認上の分類/医療機器
/対象疾患/筋骨格系および結合組織の疾患
代表研究機関
学校法人明治東洋医学院明治国際医療大学
研究代表者
(2020) 伊藤和憲 , 学校法人明治東洋医学院明治国際医療大学 , 鍼灸学部 学部長・教授
(2019) 伊藤和憲 , 学校法人明治東洋医学院明治国際医療大学 , 鍼灸学部 学部長・教授
研究期間
2019年度-2020年度
課題への総配分額

(単位:千円)

  • 8,314
  • 2020年度
    1,660
  • 2019年度
    6,654
研究概要(2020)
線維筋痛症で保険収載されているブレガバリン(リリカ)を3か月以上服用しても変化が認められない患者に対して、薬物治療に加えて頭皮鍼通電と四肢への鍼通電を混合した鍼通電治療を行うことで、痛みが軽減するか、またその結果服薬量が減少するかについて継続的に検討する。研究に同意した患者50名を最終目標としているが、今年度は12名の新たな患者の組み入れを目標とする。なお、鍼灸治療5回後に治療が有効であるかを判断は、初診時に比べてVASが20mm以上改善した場合を「効果があり」と判断し、減薬を行うことする。また、5回終了後に治療を継続する患者に対しては、半年の経過観察を行う。なお、論文は鍼灸治療5回終了時点のデータで行うこととし、データ解析を行った上で論文作成を行い、英語論文への投稿を目指す。
研究概要(2019)
線維筋痛症は難治性の痛みとして知れており、薬物治療だけでは痛みが軽減しないことも多い。特に薬物に抵抗する難治性の痛みでは、背外側前頭前野の活性低下などの中枢性のメカニズムが関与していることが指摘されており、認知行動療法や反復頭蓋磁気刺激、頭蓋直流刺激などで背外側前頭前野を活性化させることで痛みが軽減することが報告されている。鍼灸治療で頭皮を刺激する頭皮鍼や頭皮鍼通電が昔から行われていることから、これらの治療を応用して難治性の痛みの軽減できる可能性がある。そこで、線維筋痛症で保険収載されているブレガバリンを3か月以上服用しても変化が認められない患者に対して、薬物治療に加えて四肢と頭皮に鍼通電治療を行うことで、痛みが軽減し、減薬することが可能かについて検討する。

研究成果情報

【成果報告書】

成果の概要
本邦の慢性疼痛医療では、海外とは異なり薬物治療が第1選択肢であり、薬物治療が認められない時に鍼灸治療などの別の治療が利用される機会が多い。しかしながら、薬物治療に効果が認められない患者は、効果が認められる患者と比べても難治化していることが多く、どの療機関でも苦労している。そのため、現在の方針としては服薬量を増やすか、多剤を併用するしかない。ただ、服薬量には限界があること、さらに多剤の併用には副作用などのリスクがある。さらに、慢性疼痛の治療には効果的な治療に乏しいことから、薬物治療に依存しがちで、慢性疼痛に対する医療費が増大し続けている。そのため、薬物治療に変わる治療か、併用して行える治療が必要不可欠である。そのため、今回は鍼治療を薬物治療に変わる治療としてではなく、減薬を目的とした治療に変えて実践することで、少なからず減薬の可能性が認められたことは、とても大きな進展であると思われます。
特に今回用いた頭皮鍼通電は、痛みの治効機序に基づいた新しい治療である。難治性の疼痛患者では、破局的思考という独自の思考を持つ患者が多く、そのネガティブな思考が背外側前頭前野の機能を低下させ、正常な鎮痛システムを働かせていない可能性があり、その結果として、薬物などに効果が認められない可能性があると考えられている。その意味で、国内外では、背外側前頭前野部に、地場や直流通電を行う研究が存在しているが、本邦では保健適応ではないため、あまり一般的な治療ではない。そのため、これらの原理を応用して、機能低下が認められる背外側前頭前野部に直接鍼通電刺激を行う本研究は、今後の新しい治療法の可能性を示す一助になったものと思われる。その意味で、今後は頭皮への電気刺激を安全に行えるデバイスや治療法の発展につながる研究になったものと思われる。その意味で、疼痛機序に基づく新しい治療方法の開発とその治療法により服薬量が減量できたことは、とても有益な示唆に富んでおり、今後の慢性疼痛治療のあり方に、大きな影響があると思われる。
学会誌・雑誌等における論文一覧
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1.伊藤和憲, 大井康宏, 中川裕子:破局的思考の強い線維筋痛症患者に対して頭皮鍼通電と認知行動療法は有効か? 第48回日本慢性疼痛学会プログラム抄録集, 127, 2019.

2.皆川陽一, 齊藤真吾, 浅井福太郎, 伊藤和憲:鍼治療は慢性疼痛の治療として有効か? 文献レビュー. 第48回日本慢性疼痛学会プログラム抄録集, 97, 2019.02.

3.小関晋作, 大井康宏, 比嘉翔平, 河野健太郎, 伊藤和憲:鍼通電効果とDNIC効果の関係. 第68回全日本鍼灸学会学術大会抄録集, 250, 2019.05.

4.河野健太郎, 大井康宏, 比嘉翔平, 伊藤和憲:自己効力感と痛みの関係. 第68回全日本鍼灸学会学術大会抄録集, 203, 2019.05.

5.伊藤和憲:痛みかの機序から鍼治療の役割, 第49回日本慢性疼痛学会, 2020.12.11.

6.伊藤和憲:慢性痛に対する鍼灸治療とその可能性, 第68回全日本鍼灸学会学術大会抄録集, 73, 2019.5.

7.森川由紀子, 伊藤和憲:鍼灸を受診する慢性疼痛患者の痛みと心理, 全日本鍼灸学会雑誌, 70(3):196, 2020.

8.伊藤和憲:難治性の線維筋痛症患者に対して頭皮鍼通電や患者教育は有効か? 第68回全日本鍼灸学会学術大会抄録集, 136, 2019.05.



更新日:2022-05-12

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